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大手OEMの天然ガスコンプレッサーで使用されていた2セットのDuratron®PAIラビリンスシールは、それぞれが製造後11年と15年経過していますが、まだ新品のように機能していました。
三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズは、20年以上にわたり、ターボコンプレッサーのラビリンスシールに使用するアルミニウムやその他の金属に代わる高度な熱可塑性樹脂材料を提供してきました。
樹脂シールの利点の1つは、金属の歯の変形とシャフトの摩擦時の嵌合シャフトの損傷がなくなることです。 その結果、クリアランスを最小限に留めることができ、また、時間の経過に伴うクリアランスの損失が減少することで、シールが使われている間はコンプレッサー全体の圧縮効率が大幅に向上します。 樹脂シールのもう1つの利点は、シールが何年も使用された後でも高い性能を維持するため、平均修理間隔(MTBR)が大幅に延長されることです。
当社が大手OEMに提供し、11年と15年間使用された2つのラビリンスシールセットを回収しテストを行いました。 テストで得られた11年と15年使用後のDuratron T4540 PAIシール)の機械的特性データを、新品のDuratron T4540 PAI既製品のものと比較しました。 使用中、最初のシールセットは47〜60°Cの温度にさらされ、2番目のシールセットは31〜45°Cの温度にさらされていました。
目視では、シールを剥がす際に生じた損傷を除いて、問題ありませんでした。それぞれのシールには、数箇所の傷から完全に剥離しているものまで、何らかの損傷が見られました。
Duratron T4540 PAIシールの完全性を評価するために、回収したシールの機械的特性をいくつか、標準在庫品と比較しました。 11年使用のセットのBケース、2番目のホイールである1つのシールのみがフルサイズの引張試験バーを機械加工するのに十分な大きさであり、強度、弾性率、伸び値などの引張特性を得られました。 圧縮強度や弾性率など、他の機械的特性も評価されましたが、他のシールの断面は小さくサンプルサイズが限られていたため、圧縮テストサンプルのみを加工およびテストできました。
15年使用のセットのシールからは、フルサイズの引張試験バーを生成できなかったために引張弾性率値を得られませんでしたが、そのほかは完全なテストが行われました。
次に、使用後のDuratron T4540 PAIからの特性値を、データの標準的な値と比較しました。 この値は、回収した「古い」サンプルと同じプロセスで製造された圧縮成形パイプから取ったものです。 在庫から2本のパイプを抜き取り、テストプラークを機械加工しテストしました(φ450xφ28x10L、およびφ300xφ90x10L)。
下の表2は、11年および15年使用後のポリマーラビリンスシールの機械的特性試験の結果を示しています。
表2:物性テストの結果
(1)φ450×φ280×150Lパイプとφ300×φ90×150Lパイプの平均値に基づくサンプルデータ
(2)引張強度、伸び、弾性率を取れたのはBケース第2ホイールのみ。その他のサンプルからは圧縮データのみが生成された。
11年使用のシールの場合、Bケースのサンプルの引張強度と伸びの特性はベースラインより少し低かったのですが、引張弾性率は高かったのです。 これは、製品の使用によるわずかな脆化が原因である可能性があります。 曲げおよび圧縮特性は最近の製品よりも高く、これも同じ理由に起因する可能性があります。 11年使用後のシールのTgまたはガラス転移温度は280°Cで安定したままであり、ポリマー構造の大きな劣化は見られません。 また、これらのシールでは、圧縮強度と弾性率の値の広がりが7%以内に抑えられ、回収したシールのデータの整合性が見られました。
15年使用のシールでは、引張データと圧縮データの両方が、引張伸びを含むベースラインの値と近似していました。 曲げ弾性率はベースラインを上回り、曲げ強度はベースラインより低かったのですが、ポリマーの経年数を考慮すると許容範囲内です。
天然ガス圧縮機で11年と15年使用された後でも、Duratron T4540 PAIシールの完全性は最近製造された製品と非常に近いことが判りました。